スマートホームを構築するにあたっては、シェアの高いAmazonかGoogleのエコシステムを選択する人が多いと思います。でもこのブログではマイナーなApple HomeKitを使っています。その理由を書きました。
スマートホームのエコシステム
スマートホームを構築するにあたって、どのエコシステムで作っていこうか迷うところです。おそらくは、AmazonかGoogleのいずれかで始める人が多いのではと思います。一方で、Apple生態系でスマートホームを担うHomeKitも、マイナーですが一定の支持はあります。この3つのエコシステムのシェアがどのくらいなのかは、スマートスピーカーのシェアから推測できるかと思います。USで2021年に出荷されたスマートスピーカーの割合は、Amazon: 44.1%, Google: 40.8%, Apple: 15.1%だそうです。
このほか、例えばTuya, Samsung, Philips Hue, IKEAなどが自社製品を中心としたスマートホームシステムを作ってます。これらのどのシステムも、AmazonとGoogle生態系へのブリッジ機能を提供してます。この5社の中でHomeKitへのブリッジ機能も提供してくれているのは、IKEAとPhilipsだけです。なのでAmazonかGoogleを選んでおけば、対応製品が多くて安価というメリットを享受できます。
ただ、エコシステム間で非互換な問題は、Matterの登場で変わると期待されてます。Matterが広まれば、シェアが低いために対応製品が少なく高価格なAppleのエコシステムにとって、有利な展開になると思われます。
結局はHomeKitに落ち着いてしまった
このブログを始めたころは、「とりあえずはHomeKitから始めたけど、Amazon AlexaもGoogle Homeも、Home Assistantで全部取り込んで、色々試していきたい」と考えてました。でも結局、HomeKitが一番良いと思う結果になりました。以下ではその理由をまとめます。ただし、AmazonもGoogleも一応持ってはいますが、あまり使い込んでいません。なので、見当違いの内容があるかもしれません。ご容赦ください。
Apple製品と親和性が高い
HomeKitは、Appleが作って、Apple生態系のスマートホームフレームワークと位置付けているので、当然ですがApple製品と親和性が高いです。すでにAppleのエコシステムの沼にどっぷりと浸かっている信者レベルのAppleユーザにとっては、最適な選択肢です。
HomeKitは、iOS, macOS, watchOS, tvOSにネイティブに組み込まれているので、スムーズにシームレスに機能します。他の機能とコンフリクトすることもありませんし、あったとしてもすぐに対応されます。iPhone, iPad, Macには、ホーム.appが最初からOSに同梱されているので、インストールする作業も不要です。 Apple Watch, Apple TVからもインストールの手間なくHomeKitにアクセスできます。
OS機能と連携しての自動化も充実してます。ショートカットを利用したり、macOSのコマンドラインから操作することが可能です。
iPhoneのロック画面にHomeKit機能を割り当てることもできます。
Macユーザとしては、macOSにもホーム.appが用意されていて、iPhoneと同じように操作できることがありがたいです。GoogleやAmazonのスマートホームでは、WindowsでもMacでも、スマホと同様なコントロールができません。
AndroidユーザにはGoogleがおすすめかも
逆に考えると、Apple製品を一切使っていないユーザにはHomeKitは無縁です。HomeKitにはiOS製品が必須で、iPhone/iPadを持ってないとデバイスの追加ができません。なので、「iPhoneは大嫌い、自由になんでもできるAndroidしか使わない」という主義の人には向いてません。
傍観者の意見なので、いい加減ですが、Androidを使う場合は、Googleのエコシステムを選択するのが良いと思います。Amazonのデバイスは廉価に豊富に出回っていて魅力的ですが、Android OSにしっかりと組み込まれたフレームワークの方が色々と有利なはずです。HomeKitがiOSから使いやすいのと同じ理由です。前述のUSでの調査でも、Amazonはシェアを減らしGoogleが増えてます。Androidスマホとの連携が評価されているのだと思います。
Brand |
2021 shipments |
2021 market share |
2020 shipments |
2020 market share |
Growth YoY |
Amazon |
21,936 |
44.1% |
45,426 |
64.7% |
-51.7% |
20,281 |
40.8% |
19,821 |
28.2% |
2.3% |
|
Apple |
7,527 |
15.1% |
4,976 |
7.1% |
51.3% |
Total |
49,743 |
100% |
70,223 |
100% |
-29.2% |
( https://omdia.tech.informa.com/OM023934/Sharp-drop-in-2021-Amazon-Alexa-shipments-drove-smart-speaker-market-correction から引用)
一方で、iPhoneを使ってはいるものの、AmazonやGoogleのスマートホームを使用しているユーザは、ぜひHomeKitも検討してはどうでしょうか。HomeKitがあるからiPhoneにすると思えるメリットがあると思います。
アプリの作りが良い
HomeKitがあるからiPhoneにすると思えるメリットの一つが、HomeKitのアプリの完成度です。Appleは40年にわたってユーザインタフェースを追求した老舗企業なので、HomeKitアプリのUIも優れています。
Amazon, Google, Appleのアプリ比較
HomeKitは、アプリの画面デザインが良いです。市場シェア順に、Amazon, Google, Appleのスマートホーム制御アプリのスクショを以下で比較します。
Amazon, Googleは、最初に述べたように使い込んでいなくて、デバイスが少なく見栄えがしない可能性はあります。でもそれを差し引いても、違いは明らかです。AmazonとGoogleはアプリの作り込みが甘く、画面デザインからも本気度が伝わってきません。それと比較すると、Appleのアプリは、本気で作っている感じが伝わります。iPhoneホーム画面に合わせたカラフルなデザインで、アイコンやフォントのデザインとバランスも完璧です。
Amazon, Googleアプリのトップ画面が煩雑な印象なのは、アプリの目的が違うことに起因してます。Amazon, Googleのアプリは、スマートスピーカを設定するアプリであり、デバイス操作は副次的な機能です。それに対してAppleホームでは、電球やスイッチ等のスマートホームデバイスを操作するアプリで、それらがトップ画面に並んでいます。スマートスピーはデバイスの一つに過ぎません。デバイスとスマートスピーカが同等に扱われて、さらにそれらが、家、部屋、照明、セキュリティなどのカテゴリで分類されています。これにより、スマートホームの状況をユーザが容易に把握できます。
デバイスメーカアプリとの比較
Amazon, Googleのアプリが特別にしょぼいわけではなくて、それ以外のスマートホームデバイスメーカーのスマホアプリも似たようなデザインです。各社のスクショを示します。Tuya Smart, Nanoleaf, SwitchBot, Nature Remo, IKEAの順番で、最後が再びAppleホーム(デフォルト設定の背景)です。これもApple HomeKit以外の画面は、設定デバイスが少なく見栄えがしない可能性はあります。でもそれを差し引いても、違いは明らかです。
クラウド依存度が低い
ちゃんと比較できていないので、自信がありませんが、HomeKitは、Amazon, Googleのスマートホームシステムと比較して、クラウド依存が低いように思います。HomeKitでは、HomeKit Accessory Protocol (HAP)というプロトコルで、デバイスやiPhoneなどがクラウドを介さずに直接通信してます。HomePodやApple TVがホームサーバーとして機能しますが、外部接続が切れても動作します。こちらで実験したのでご覧ください。
その一方で、外出先から家の中にアクセスする経路や、ユーザの認証などにはiCloudの機能を活用しています。HomeKitは、ローカルとクラウドの良いところを組み合わせて構成されていると感じてます。
対応デバイスが少なくて高価
HomeKitを選んだ場合のデメリットは、ハードウェアが高価で、対応デバイスが少ないことです。
iPhoneはAndroidより高価です。HomePodもAmazon, Googleのスピーカに比べたら高価です。種類も少なく、HomePodにはディスプレイ付きのモデルはありません。とはいえ、HomePod miniが出たこともあり、それほど差は無くなったと思います。スマホも、同じ性能で比較したら1.5倍以下かなと思います。HomePod miniの音質も、AmazonやGoogleのスピーカと比較して良いです。Amazon Echoシリーズはとても安いのですが、原価を下回っていて赤字であるとも言われてます。事業縮小も伝えられていて、サステナブルな状況ではなくなっている可能性もあります。
Apple製品が割高なのは許容範囲だとして、問題はサードパーティのスマートデバイスです。Appleのホームページには、多くの製品が対応しているとありますが、技適やPSEの日本の規制に準拠して、国内で販売されている製品はごくわずかです。
Amazon/Google対応製品はあるけど、国内向けHomeKit対応製品が無いカテゴリとしては、赤外線リモコン、シーリングライト、壁スイッチ、ドアホン、スマートロックなど多くあります。特に赤外線リモコンが無いために、エアコンなどが使えないところが辛いです。過去の記事ではスマート赤外線リモコンをDIYしてますので参考にしてください。
ZigbeeとBLEは、低電力でメッシュネットワークが組めるので、スマートホームに適しています。しかし、国内規制に適したZigbee/BLEデバイスを供給し、ハブをHomeKit対応しているメーカは、IKEAとPhilips Hueだけです。
時々Amazon/Google/Apple Siri対応と書かれた製品を見かけます。例えばNature Remoも、Amazonの販売ページでSiri対応と書かれてます。
紛らわしいのですが、これはHomeKitに対応しているという意味ではありません。Natureが作っているiPhoneアプリがショートカットに対応していて、それをSiriから操作できるという意味です。
非対応デバイス対策
HomeKit対応デバイスが少ない問題は、Homebridgeを使うことでほぼ解決します。Homebridgeが無かったら、よほどのApple信者でない限り、HomeKitを使うことはないと思います。ただ、Linuxサーバを設置して設定する作業が必要です。誰にでもお勧めできる方法では無いですが、このブログでできるだけ詳しく紹介していきたいと考えてます。
Home Assistantを使っても、Homebridgeと同様にあらゆるデバイスをHomeKit対応させることが可能です。ブリッジ機能を提供するだけのHomebridgeとは異なり、Home Assistantはスマートホームを制御するシステムそのものを提供します。このブログでも少しだけ試しましたが、設定手順はHomebridgeの数倍複雑です。でも、HomeKitを使う前提ならば、Home Assistantでできることの95%はHomebridgeでできるという意見もあります。なので、今のところHome Assistantは常用していません。
冒頭にも書きましたが、Google, Amazon, Appleエコシステム間でデバイスが非互換な問題は、Matterの登場で変わると期待されてます。シェアが低いために対応製品が少なく高価格なAppleのエコシステムにとって、有利な展開になると思われます。例えば、現在SwitchBot製品は、一部のスマートプラグを除いてHomeKitをサポートしてません。でもMatter対応のHub 2が出れば、HomeKit対応すると期待されてます。また、AppleがMatterの仕様作成に協力したことから、MatterはHAPに類似した仕様になってます。Amazon, Googleの場合よりも親和性が高いと予想されます。
まとめ
スマートホームを構築するにあたって、Amazon, Google, Appleの、どのエコシステムで作っていこうか、迷われる方は多いと思います。
iPhoneユーザの方にはApple HomeKitがおすすめです。対応デバイスが少ない問題をHomebridgeで解決できるか、Matterの普及に期待できるかなどを判断して決めてください。一方で、Androidにこだわりのあるユーザの方には、Googleのエコシステムを使うのがおすすめかと思います。OSを作っているメーカーが提供するフレームワークは、色々な場面で有利です。これに対して、Amazon Echoは安価で種類も多いですので、補助的に使うのが良いのではと思ってます。
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