Matter over Wi-FiとThreadの消費電力を比較する

DIYする
左がESP32 (Wi-Fi), 右がESP32-H2 (Thread)

ESP32とESP32-H2を使って、Matter over Wi-Fiと、Matter over ThreadでLEDを点灯させる試作をしました。今回はそれぞれの消費電力を電流で比較します。

MatterでLチカ

前の記事で、ESP ZeroCodeを使ってHomeKitからMatter経由でLEDを点灯・消灯させる試作を行いました。ESP32とESP32-H2を使って、それぞれWi-Fi経由、Thread経由でHomeKitに接続しました。

ESP ZeroCode を使ってMatterデバイスをDIYする
ESP32を作っているEspressif社が、Matterデバイス開発するWebアプリ、ESP ZeroCodeを公開しました。これを使ってESP32で簡単なMatterデバイス(照度のみ制御できるLED照明)を作ってみます。 ESP Ze...
ESP32-H2を使ってMatter over ThreadデバイスをDIYする
ESP32-H2開発キットを使って、Matter over ThreadデバイスをDIYしました。前回に続いてEspressif社のESP ZeroCodeを利用します。Threadで動作するMatterデバイスは、まだどこからも製品化され...

LEDは、それぞれのESP32のデジタルピンに接続して、PWM制御してます。どちらの試作も同じLEDを使用し、電流制御抵抗もどちらも220Ωにしました。100%点灯した場合に抵抗の両端電圧が1.1Vでしたので、LEDには5mAの電流が流れているはずです。Wi-FiとThreadで、HomeKitからのOn/Off操作に対する応答速度はほぼ同じでした。見た目には区別はつきません。

ほぼ同じハードウェア・ソフトウェア構成なので、ThreadとWi-Fiの消費電流比較ができるかと考えました。

消費電流の比較

ESP32, ESP32-H2の開発キットは、USB ACアダプタから5Vを供給して使います。簡単に電流測定できるように、USB ACアダプタの代わりに、安定化電源を接続しました。

また、5V給電、3.3V給電それぞれの比較も行いました。

安定化電源

使用した安定化電源は、Amazonでお安く売っていたこの製品です。

主電源スイッチは背面にあるのですが、この他に出力をOn/Offするスイッチが前面にあるのが、選んだポイントです。必須のスイッチだと思うのですが、無い製品もあります。安かったですがちゃんと動作します。これに内蔵されている4桁の電流値を読みました。

5V給電の比較

ESP32、ESP32-H2開発キットの5V端子に、安定化電源から給電した時の電流は以下です。HomeKitからMatter経由でLEDをOn (100%) / Off (0%)にしたときの電流です。LED On/Offでの約5mAの違いは、LED電流に相当しているので、妥当な値です。

5 V
Network LED Off (mA) LED On (mA)

ESP32

Wi-Fi

39~111

45~115

ESP32-H2

Thread

30

35

Wi-Fiの場合、電流が変動します。ほぼ9割程度は、最小電流(例えばLED Offの場合は39mA) なのですが、20-30秒ごとに電流が増加します。デジタル表示のタイミングに依存するのだと思いますが、最大では100mA以上流れます。定期的にWi-Fiからの要望に従って反応を返す必要があるのかと思われます。Wi-Fiは、こまめなご近所付き合いが必要なコミュニティなのですね。

それに対してThread接続は、ずっと安定して低いままの電流です。Wi-Fiの最低電流と比較して75%程の電流を、変化することなく消費してます。Threadは、通常の消費電流が少ないだけでなく、それが変化しない特徴があるようです。

3.3V給電の比較

次に、ESP32、ESP32-H2開発キットの3.3V端子に、安定化電源から給電した時の電流を示します。5V給電と同じような結果が得られました。

3.3 V
Network LED Off (mA) LED On (mA)

ESP32

Wi-Fi

39~109

44~113

ESP32-H2

Thread

29

34

電流は同じですが、供給している電圧が違うので、消費電力としては3.3V給電の方が優れてます。開発キットの上には5Vを3.3Vに変換するDC-DC変換チップが搭載されています。3.3V給電ではこのチップを使わないので、その分、電力利用効率が高いのだと思います。

開発キットの上には、DC-DC変換チップの他に、USBシリアル変換チップも搭載されています。こちらの情報によると、これらのチップを取り外すと、

ESP32-DevKitCのDeepSleepが結構電流を消費しているので原因を調べてみた
ESP32-DevKitCは、ESP32を簡単に利用することができるボードです。私は、EspressifSystems純正のESP32-DevKitCではなく、その互換品のESP32-DevKitCを安いのでよく使っています。その互換品のE

最大で11.5mA程度、消費電流を減らせるようです。現在では、Wi-FiとThreadの差は、定常状態では25%程度ですが、不要なチップを外せば50%くらいの差になるかもしれません。

まとめ

ESP32とESP32-H2で、それぞれMatter対応のLED点滅デバイスを作りましたので、Matter over Wi-Fiと、Matter over Threadの消費電流を比較しました。定常状態ではThreadの方が25%ほど省電力でした。Wi-Fiは瞬間的に100mA程度の電流を要するのに対して、Threadは低電流のまま変化がありません。低消費電力のIoTデバイスに適した仕様なのかと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました