Matterで動作するリレースイッチモジュールを使ってみました。前回はZigbee版でしたが、今回のモジュールはおそらく同じメーカーのMatter over Wi-Fi版です。Matterなので、Homebridgeを経由せずに直接HomeKit接続できます。仮組みをして、動作確認しました。
Matter対応壁スイッチモジュール
既存の壁スイッチに組み込んでスマート化するリレーモジュール製品を前回紹介しました。
これはZigbee接続でした。本来は、下の図のように、ヨーロッパや中国のEU規格壁スイッチに組み込む製品ですが、日本のUS規格壁スイッチでも、内部空間に余裕があれば組み込めます。既存の実スイッチと連動する機能もありました。
このモジュールと全く同じデザインで、Matter対応版が登場していました。送料込みで1,259円でした。Matter over Wi-Fi製品です。Zigbeeの製品とそっくりなデザインなので、同じメーカーの製品だと思われます。Zigbee方式とは違い、より電力を必要とするWi-Fi方式なので、組み込みには中性線が必要です。
今回は動作確認までで、次回以降で、スイッチや機器への組み込みをしたいと思います。
開封する
Zigbee版と同様、簡素なボール紙の箱で届きました。
箱の中身は、本体、取り付けアダプター、取扱説明書です。
本体色が派手な黄色であること以外は、Zigbee版とほぼ同じデザインです。裏側には、Matterペアリング用のQRコードが貼られてます。
仮配線する
マニュアルには、典型的な配線図として以下の図が載ってます。実スイッチはなくても動作します。その場合は、MatterからOn/Offするリレースイッチとして動作します。
Zigbeeモデルと違い、中性線(N線)の配線が必要です。またスイッチの反対側は、L線です。通常の家の配線ならば、壁スイッチの片側はL線に接続されているので、そこは無変更で使用できます。
動作確認のために、仮配線しました。コンセントプラグに電源ケーブルを接続して、テーブルタップ(負荷側)にNを、スイッチにLを接続します。また、そのN, Lをこのモジュールに接続します。最後に、スイッチの反対側とモジュール、テーブルタップのLとモジュールを接続します。コンセントやスイッチのケーブル差し込み口は、本来は1.6mmまたは2.0mmのVVF線を差し込むべきところです。写真では、より線ケーブルを差し込んでしまっていますが、仮配線ということでご容赦ください。
このプラグをコンセントに差し込み、テーブルタップに電球ソケットを接続し、LED電球を取り付けました。この配線で、スイッチOn/Offで、電球をOn/Offできることを確認しました。Zigbeeモデルは、ソリッドステートリレーでしたが、Matterモデルは機械式リレーのようです。On/Offの際に、カチカチと音がします。
Zigbeeモジュールの時と同様に、各端子の電圧を調べました。検電器で調べると、Onの時にはL, L1, S1端子全部が、Offの時にはL, S1端子が、ライブ状態でした。これらには手で触れてはいけないです。一方、L端子とS1端子の電位差は、スイッチOffの時にDC 44 Vでした。L端子とS1端子にアナログ手スタを当てるだけでも動作したので、スイッチに流れる電流は微弱な電流です。なので、絶縁さえ確保できれば、低電流用スイッチ部品でも十分でしょう。
HomeKitから使う
仮組みに通電したところ、モジュール内部のLEDが点滅しました。Matterのペアリングモードになっているようです。ペアリングモードになっていない場合は、接続した実スイッチを5回On/Offするか、もしくはリセットボタンを10秒長押しすると、Matterのペアリングモードになります。
Matterデバイスなので、通常のHomeKitアクセサリと全く同様の手順で、ペアリングできます。まずは、iPhoneのホーム.appの右上のプラスマークから、「アクセサリを追加」を選びます。
次に、QRコードを読み込みます。ラベルのQRコードを綺麗に保存するために、QRコードを複製するアプリを使っています。ここではそのアプリのスクリーンショットを読み込ませています。
するとスイッチを追加する画面が表示されるので、「ホームに追加」を選びます。
この後、設置する部屋の指定や、名前の指定などの、通常のアクセサリ追加手順を経て、無事ホームに追加されました。iPhoneやMacのホーム.appには、以下のようにスイッチが現れます。名前はデフォルトのままですが、スイッチのタイプを照明にしました。
Matterのペアリングはスムーズで、1回で成功しました。動作も安定しています。
動作設定の変更はできない
ZigbeeモデルをZigbee2MQTTに接続したときは、MQTTメッセージ経由で、
- ”power_on_behavior”(電から復帰した場合の動作)
- ”switch_type”(実スイッチ動作)
の値を変更できました。Zigbee2MQTTのWeb UIを使用する場合は、以下のように設定できました。
Matterモデルの場合これらの値は、少なくともHomeKitからは変更できませんでした。今後、専用のアプリが提供されるのかもしれません。なのでMatterモデルでは、それぞれの設定が、
- 停電から復帰した場合は、停電直前のOn/Off状態になる
- スイッチタイプはToggle (詳細はこちら)
で固定です。大体の場合はこの設定で問題無いと思います。Toggleタイプの設定は、市販の壁スイッチならば、パナソニックコスモシリーズワイド21のスイッチなどに適してます。
Sonoffの製品
今回は、Tuya系列の製品を試しましたが、SonoffからもMatter over Wi-Fiのスイッチモジュールが販売されています。300円程高いですが、端子が多く小型ですので、組み込みやすいかと思います。ただ、Tuyaには2gangモデルがありますが、Sonoffは1gangのみのようです。サイズが小さいので2gnag分の回路部品を組み込めないのかと思います。
ZigbeeとMatterのどちらが良い?
Matterならば、Homebridgeを使用しなくても、HomeKitから直接使用できます。なので、一般的なユーザには、前回のZigbee版よりも、今回のMatter版がおすすめです。
ただ、すでにZigbeeを使える環境が整っている(Zigbee2MQTTとHomebridgeのためのサーバが稼働している)場合は、Zigbee版も良いと思います。特に、今回ご紹介したスイッチは、Matter over Wi-Fiなので、既存のWi-Fiネットワークに負荷がかかります。電力も要するので、中性線の配線も必要です。
Zigbeeと同じ物理層 (IEEE802.15.4) を用いるMatter over Thread方式のスイッチモジュールが発売されれば、これらの問題が全て解決されると期待してます。
まとめ
既存の壁スイッチに組込むタイプのMatterスマートスイッチモジュールを使ってみました。Homebridgeなどを経由せずに、HomeKitに直接接続可能です。試してはいませんが、Google HomeやAmazon Alexaにも接続可能と思われます。Matter over Wi-Fi方式なので、中性線が必要です。通常の日本の壁スイッチでは、中性線が来てなくて取り付けられない場合もあるかもしれません。中性線のある壁スイッチや、さらには機器組み込みスイッチなどの用途には問題なく使用できると思います。
コメント
非常に役に立つブログありがとうございます。Dimmer機能はこのモジュールを使用したときに使えるのでしょうか?
On/Offのみです。機械式のリレーが内蔵されていて、接点が開閉するだけの動作です