Matter仕様書を手に入れて対応製品を予想する

HomeKitを使う

Matterの仕様書はCSAのサイトからダウンロードできます。これを見ると、これからどのようなデバイスをMatter 1.0が想定しているのかがわかります。

仕様書を無料で入手

Matterになると何ができるのか、あまり情報が出回ってなくてよくわかりません。仕様書を見ればもっとしっかりした情報が得られるのではと思い、探してみました。すると、以下のページから誰でも無料でMatterの仕様書を入手できることがわかりました。

ここで、仕様書の種類を指定して、名前とメールアドレスを送信すると、メールにダウンロード用のURLが送られます。Matterに関連した3種類のPDFがありましたので、入手しました。

Matterの製品を開発するレベルの情報は他にあるのかもしれませんが、とりあえずどんなものかはわかるくらい、十分な量の情報です。3種類のPDFで合計1,335ページあります。国際標準と関わるのって、英語との戦いですよね。日本発の規格がなかなか国際標準にならないのも、仕方ないところかもしれません。

仕様書を見ると、いろいろなデバイスの振る舞いが決められています。一番量の少ない、Matter Device Library Specification (85ページ)がコンパクトにまとまっていてわかりやすいです。これを起点に、他をつまみ読みしました。これからどのような振る舞いをするデバイスがMatter 1.0でサポートされているのかがわかる気がします。

照明器具

Lightingという名前で、on/offだけができる照明器具、明るさ、色温度、色が調整できる照明器具の振る舞いが定義されています。明るさ、色温度は最大254段階で調整できるようです。

また、おそらくはホームサーバと連携して、onの後に0.1秒単位で指定した時間後にoffする、もしくは、offの後、指定した時間はonにしないなどの指定も可能のようです。HomeKitと同じですね。

スマートプラグ・スイッチ

on/offができるスマートプラグや壁スイッチに相当するものです。またonの後に0.1秒単位で指定した時間後にoffする、もしくは、offの後、指定した時間はonにしないなどの指定も可能のようで単純なon/off以外に、サイリスタを使った調光器のようなものも想定されているようです。

ポンプ

水などを汲み上げるポンプです。唐突にマニアックな家電製品が登場した気がします。参加企業のどこかのたっての希望なのかもしれません。on/offと200段階の強度レベルが指定できます。温度、流量、圧力などのセンサを備えている場合もあるようです。

センサ

以下のセンサがサポートされています。ただ、電力センサは考慮されていないようです。Apple HomeKitにも電力センサはないので、それに準じたのかもしれません。スマートプラグには電力センサ内蔵のものもあるので、ちょっと残念です。

接触センサ

接触センサは、磁石の近接などを利用してon/offの2値を返すセンサです。

人感センサ

人の存在を1bitで返します。また、センサタイプ(PIR, 超音波、物理接触、それらの併用)も返します。

温度・湿度・照度・流量・圧力センサ

これらのセンサは、最大で16ビットの測定値データを返します。0から2048までの許容誤差も返すこともあるようです。

照度センサーはセンサータイプとして、フォトダイオード、CMOS、そのほかを返す機能もあるようです。

圧力センサは、測定値数値の他に、10の冪乗を示す倍率の情報も用意されてます。

ドアロック

手動および遠隔地からの操作で施錠できるドアロックです。HomeKitのLock Mechanismより多彩な機能が設定されています。また、ドアロックとドアロックコントローラの2種類が用意されているようです。

PIN番号、指紋、NFC、顔認識、OTA(ネットからのPIN通知)のいずれをサポートしているのかを示すビットがあります。曜日や日付を指定してアクセスできるユーザを許可するなどの指定もあります。

施錠状態のモニタのほか、ドア開閉、ドア位置センサなども想定されています。また、ロック方式(デッドボルト、磁石錠、ラッチボルド、シリンダー錠など)を報告するデータ項目もあります。オートロックタイミング、開閉履歴のログ機能、キーパッド操作などの設定項目もあります。

ドアロックは、他のデバイスに比べて特に詳細に定義されている印象があります。SwitchBot社などからのリクエストが多かったのかもしれません。ドアロックを作っている会社の専用アプリを、全部Matterベースに移行しても大丈夫と思われるくらい、機能が豊富です。

カーテン・ブラインド

カーテンやブラインドなどは、Window Coveringという名前で定義されています。

ロールカーテンのように上下する方式、ブラインドのように傾ける方式、その両方の併用、などの設定があります。巻き上げやカーテン移動の位置は%またはcmで指定し、傾きは%または0.1度単位で指定します。HomeKitのカーテンと同様に、Target位置、Current位置を使って、動作の進捗状況が確認できます。

動作モードには、キャリブレーションモードや、メンテナンスモードがあり、そのモードでは開閉命令を受け付けなくなってます。その間に、本体のスイッチや、メーカ提供のアプリを使って、開閉位置のキャリブレーションをしたり、電池交換する際に使用する機能と思われます。

空調機器

空調機器 (HVAC, Heating, ventilation, and air conditioning) は、サーモスタット、ファン、前述のポンプなどの機能を持ちます。ポンプが含まれるのが謎ですが、冷水・温水で空調する機器を対象としているのかもしれません。

サーモスタットには、ヒーター、クーラー、その両方のどれをコントロールするかを指定します。ヒータ、クーラーの両方をコントロールする場合は、自動モードとすることもできます。サーモスタットのシステムモードとして、Off/Auto/Cool/Heat/Fan only/Dry/Sleepなどが用意されてます。HomeKitでは、Off/Auto/Cool/Heatでしたので、増えてます。日本のエアコンに多い送風機能・除湿機能もサポートされたようです。ただ、除湿機能の詳細な説明はあまり書かれていません。

AV機器 (Media Device)

メディアデバイスというカテゴリーで、ビデオ再生器とスピーカーが定義されてます。

ビデオ再生器

テレビ、DVDプレイヤー、セットトップボックスなどが含まれます。On/Off, 音量、再生、チャンネル変更、入力切り替え、出力切り替え、スリープなどの機能を提供します。HomeKitのTelevision Accessoryよりも機能が豊富で普通のテレビの基本機能が揃ってます。

Basic Video PlayerとCasting Video Playerの2種類があります。Basicは通常のテレビの機能です。Castingは、Basicに加えて、コンテントアプリプラットフォームを起動できるとのことです。なんのことか分かりにくいのですが、コンテント提供者によるアプリのことらしいです。Apple TV、Amazon Prime、NETFLIXなどのアプリのことかと思われます。ただ、アプリが起動した後は、Matterから何か操作ができるわけでも無いようです。

スピーカー

スピーカーはOn/Offと音量を設定できます。照明などのOn/Offと明るさレベルと同じ動作という説明があるだけで、あまり詳しく書かれていない気がします。HomeKitのSpeakerアクセサリと同様のものを目指しているようです。

まとめ

無料配布されているMatter 1.0の仕様書をダウンロードしました。ざっとみたところ、以下の製品が用意される可能性が高いと思います。

  • スマートプラグや壁スイッチ
  • スマート電球や照明器具
  • テレビまたはそのリモコン
  • エアコンまたはそのリモコン
  • 扇風機・ヒーター
  • ドアロック
  • カーテン・ブラインド

一方で、Matter 1.0でカバーされていない機器、例えばCO2センサ、電力センサ、ドアベル、インターフォン、監視カメラ、散水器、マイクロフォン、セキュリティシステム、バルブ、ガレージドア、ロボット掃除機などは、規格が整うまでは登場する可能性が無いと思われます。

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