Matter対応リモコンNature Remo nanoをHomeKitで使う

Apple対応品を使う

Nature社のMatter対応新型スマートリモコン、Nature Remo nanoを、HomeKitから使いました。エアコンは温度・冷暖房切替・On/Offが、その他の家電ではOn/Offが可能で、ちゃんと動作します。Homebridge不要でHomeKitから使えるので、より多くのAppleユーザがHomeKitを使うきっかけになると期待してます。

Nature Remo nano発売

Nature Remo nanoが、2023年7月4日午前に発表されました。世界初のMatter対応スマート赤外リモコン製品で、Nature社初のHomeKit対応製品でもあります。発表日の午後からAmazonで買えるようになりました。

Nature Remoのスマートリモコンは、AmazonやGoogleのシステムには対応しているものの、Apple HomeKitには未対応でした。ただ、クラウドAPIとローカルAPIが公開されているので、Homebidgeプラグインが作られてます。それを使ってHomeKitからも利用できました。以下の記事をご覧ください。

Nature RemoをHomebridge / HomeKitから使う
ネットから操作できる赤外線リモコンNature RemoをHomeKitから使えるように設定します。クラウド経由の設定と、ローカルAPIを使った設定の2種類の方法があります。追記:Matter対応新型スマートリモコン、Nature Remo...

それが今回、なんとMatterに対応し、これによりHomeKit対応しました。SwitchBot社と同じ経緯です。Matterが注目されたことでHomeKit対応デバイスが増えて嬉しいです。

nanoは従来のNature Remo製品より性能を抑え、その代わりに小さく安価にしたエントリーモデルです。温度センサーが未搭載で、赤外線の強度も弱いです。

amazon.co.jpより引用

エントリーモデルですが、唯一のMatter対応です。これから上位モデルも、ファームウェアアップデートかもしくは新製品投入で、Matter対応していくと思われます。

開封する

発売と同時に購入しました。お手軽価格で良かったです。翌々日に、製品の形状が型押しされた、おしゃれな紙箱で到着しました。

開けると、シンプルな本体が入ってます。電源と電源ケーブルは付属してません。

裏側には、Matterのロゴとペアリング番号が書かれてます。

電源ケーブルの受け口は、USB Type-Cです。

Natureアプリに接続する

まずは、Nature Remoのユーザのほとんどが利用している、一般的な接続をします。Nature Remo(ここではnano)をNatureのクラウドに接続し、スマホアプリから操作する方法です。

通常の方法なので、手順説明ページも多数ありますので、ごく簡単に書いておきます。まずは、Natureアプリを使って、Natureのクラウド上に作ったアカウントにログインし、Nature Remo nanoを登録します。既にどこかに登録済みのnanoの場合は、リセットします。背面の穴にあるボタンを5秒以上押下します。Nature Remoのライトの点滅が黄色くゆっくりの状態になったら、リセット状態です。

次に、家電製品のリモコンを登録します。今回は、

  • テレビ(東芝Regza)
  • エアコン(パナソニック)
  • シーリングライト

の3種類を登録しました。テレビとエアコンは大手メーカー品なので登録は簡単です。アプリのテレビ、またはエアコンを選び、赤外線信号をRemo nanoに読み込ませれば、メーカーを自動認識してくれます。これでOn/Offの他、それぞれのチャンネル音量変更、温度風量調整など可能になります。

シーリングライトは、以前の記事でも使った中国製品です。下の写真のようにシンプルなリモコンです。スマホアプリの「照明」カテゴリでは自動認識されませんので、On/Offボタンのパターンを、照明器具として登録しました。

その結果、アプリには、テレビ、エアコン、照明器具の3種類が、以下のように登録されました。

Matterで接続する

次にMatterによりHomeKitへの接続を試しました。iPhoneのホーム.appから、右上の+ボタンを押し、「アクセサリを追加」を選択します。

この時、iPhoneとNature Remo nanoはBLEで通信してます。なので、「近くにあるアクセサリ」として、nanoが現れてます(なぜか名前はハイフン1個に見えます)。

「近くにあるアクセサリ」を選ぶと、設定コードを聞かれます。

nanoの裏側に書いてあった番号のことです。ちょっと面倒ですが、手入力します。

この後、2, 3回失敗しましたが、

最終的には登録できました。いつものように、iPhoneを2.4GHz WiFiに切り替え忘れていたのが原因だったかもしれません。Nature Remo nanoは、ブリッジとして登録されます。名前、設置場所などを指定します。

ブリッジとしての登録が終了すると、Nature Remoに接続してある機器が、次々と自動的に登録されます。今回の例では、「照明」と「エアコン」と「テレビ」を登録してあるので、それが順次登録されます。名前をつけておきます。

HomeKitから使う

これでMatter経由での接続が完了しました。Nature Remo nanoはブリッジとして接続されます。

iPhoneまたはMacのホーム.app画面には、Nature Remoに接続された家電が現れます。今回の例ではテレビ、エアコン、照明が現れます。応答は良く確実に動作します。

後述するように、Nature Remo nanoのMatter対応では、エアコン以外の機器は、現在のところOn/Offしかサポートされていません。HomeKitから見えるアクセサリ種別は、プラグ(コンセント)、ファン、照明に切り替えられます。いずれもできることはOn/Offだけですが、表示アイコンを実際の機器に合わせて切り替えられます。上の例では、照明とプラグに割り当てています。

Matter接続したデバイスは、通常のHomeKitアクセサリとして機能するので、他のアクセサリとの連携も可能です。例えば、HomePod miniに搭載された温度センサを使って、エアコンを稼働させるオートメーションを以下のように設定可能です。

Matter接続のメリット

Nature RemoをHomeKitから使おうとする場合、今まではHomebridgeを使う必要がありました。その接続方法は、2種類あり、一つはNatureクラウドのAPIにアクセスする方法です。クラウドの機能で、エアコンの温度調整などの複雑な信号も送れます。

もう一つは、Nature RemoのAPIにアクセスする方法です。クラウド非依存で動作しますが、生の赤外線信号を伝える必要があるので、エアコン温度設定のような、複雑な操作には向いていません。

今回、Matterに対応してくれたおかげで、HomebridgeなしでHomeKitに直結できるようになりました。

上図のように、Nature RemoはMatterでローカルに接続しますが、Natureクラウドは依然として必要なようです。試しに家庭内LANのインターネット接続を外したところ、どのデバイスも動作しなくなりました。Nature Remoは、Matter経由で受け取った操作コマンドを一旦クラウドに送り、クラウドで実際の赤外線信号パターンを生成してもらっているようです。

Matter接続の制約

対応デバイスが少なくて苦労してきたHomeKitユーザにとって、とてもありがたいMatter対応です。でも制約が4点あります。

温度表示されない

低価格モデルのnanoは、温度センサーを搭載していません。なので、Heater Coolerアクセサリとして使用すると、現在温度の表示が0.0になってしまいます。

HomeKitとMatterのどちらの規定でも、Heater Coolerアクセサリ(MatterではHVAC) は、現在温度を検出する温度センサーを搭載していることになってます。なのでホームでは、現在の室温を表示するようデザインされているのですが、そこが0.0°になってしまいます。

HomebridgeとESP32で作ったDIYスマートリモコンならば、温度センサを搭載していない場合に、他の温度センサーの数値を表示させることも容易でした。でもMatterで表示されている表示部分を、書き換えることは困難です。温度表示が気になるようでしたら、Nature Remoの上位モデルがMatter対応するのを待つしかありません。

エアコンの風設定ができない

エアコン機器の場合、Nature Remo nanoからMatter経由で行える操作は、以下のみです。

  • On/Off
  • 運転切替(冷暖房)
  • 温度設定

HomeKitでは、このほかに風速、風向の設定が可能です。例えば、ESP32でDIYしたスマートリモコンならば、On/Off、運転切替、温度設定のほかに、首振り(吹き出し方向のスウィング)とファンの速さの調整が可能でした。

Matterにも、スウィングや風速設定は定義されています。でも、Nature Remo nanoではまだ対応していないようです。Nature Remo nanoで登録したエアコンの詳細設定を以下に示します。上の図と比較して、風向・風速に関する設定が無いことがわかります。

エアコン以外はOn/Offのみ

エアコン以外のデバイスに関しては、On/Offだけが可能です。照明の場合、可能な操作はOn/Offだけで、照度、色温度、色設定の機能はありません。テレビもOn/Offだけが可能です。今回設定したテレビは、On/Offするスマートプラグのようなアイコンで表示されました。前述のように、このほか、ファン、照明に切り替えることも可能です。

HomeKitやMatterでは、テレビには入力ソース切り替えなどの機能が定義されています。Matterには、音量設定機能も提供されてます。以前DIYした東芝Regza用アクセサリーでも、チャンネル切り替え機能を実装しました。

Nature Remo nanoのMatter機能の制約に関しては、Natureのサポートページでも説明されてます。ここにも、

  • 基本的にはOn/Offのみの操作ができることと、
  • エアコンに関しては加えて温度設定と冷暖房切替ができる

と書かれてます。AmazonのSmart Home Skillと、GoogleのDirect Actionsを使った従来方式の方が、Matterよりも多機能なので、Amazon/Googleユーザは、従来通りの方法で連携することをおすすめしてます。Matterになったメリットは、Appleユーザ限定のようです。今後のアップデートに期待したいです。

登録台数が3台まで

Nature Remo nanoでMatter登録できる「家電」の台数は、3台までです。理由は明らかにされていません。nanoに搭載したチップの処理能力の問題か、メモリーの制約なのかもしれません。赤外線が届く範囲が限られているので、3台の機器制限でも問題ないような気もします。ただ、使い方によっては致命的な制約になるかもしれません。

例えば、テレビのリモコンをHomeKitから使うために、チャンネルボタンや音量ボタンを、それぞれHomeKit上の個別のボタンに割り当てることを考えます。今の仕様では、テレビはOn/Offしかできないので、このような設定の需要はあると思います。その場合、これらのボタンはそれぞれ独立した「家電」になってしまいます。なので登録できるリモコンボタンは全部で3個までになります。

登録台数が3台を超える状況を確認するために、今回使用したシーリングライトの、「明るく」「暗く」のボタンを、HomeKitのボタンとして登録してみることにしました。

まずはNatureアプリに、「暗く」「明るく」のボタンを登録しました。それぞれ名前を、以下のように「りもなの暗く」「りもなの明るく」とします。(「りもなの」はNature Remo nanoの公式愛称らしく、Nature社が指定するハッシュタグに使われてます。)

それぞれはデフォルトではスマートプラグアイコンで登録されました。これをタップすると、シーリングライトが暗く・明るくなります。このnanoに登録されている家電製品は、テレビ、エアコン、シーリングライトの3種類なのですが、ボタンを追加したので、Nature Remoの「家電」数としては、5個になりました。一方で、Matterから使える家電は3個までです。なので3個を超える部分は、Matterから使用できません。Matterで使用する3個の選択は、Natureアプリの「家電を選択」の画面で設定できます。ここで必要とする3種類を選択します。

ここで示した明るく・暗くするボタン設定は、本来ならば「照度が調整できる1個の照明器具」として実現すべきです。多数のリモコンボタンをMatterのスイッチに割り当てること自体が不適切と言えます。そもそも、現在の状態を取得できない赤外線リモコンは、スマートホームとして暫定的なデバイスなので、あまり頑張っても意味がない、という考えもあるかと思います。制約はあまり気にせず、赤外線リモコンの基本的な操作がMatterからできるようになったことを喜びたいです。

nanoのMatter対応

Nature Remo nanoのMatter対応について、こちらに詳しい説明がありました。それによると、nanoが対応しているMatterのデバイスタイプは、

  • OnOff Light (照明)
  • Thermostat (エアコン)
  • OnOff Plug-in Unit (TV, 学習リモコン)

だそうです。OnOff Lightというのは、照度や色の調整はできない、単純にOn/Offだけができるタイプの照明のことです。OnOff Plug-in Unitは、スマートプラグのようにOn/Offのできる装置です。

そして対応しているクラスター(機能)は、

  • OnOff
  • Thermostat
  • ModeSelect

とのことです。OnOffの機能に加えて、温度調整と、モード切り替え(冷暖房の切り替え)ができるということです。これらのMatter仕様が実装されていると考えると、前述の制約の部分がわかりやすいかと思いました。

まとめ

Nature Remoの新製品エントリーモデルnanoがMatterに対応し、HomeKitから使えるようになりました。動作確認したところ、キビキビと快適に動作しました。Homebridgeを使わなくてもスマートリモコンが使えるようになったので、HomeKitユーザが増えていくことを期待してます。

Matter対応により、HomeKitだけでなく、GoogleやAmazonからもMatter接続できるようです。ただクラウド経由に比べて操作項目が少ないので、Natureでは、従来通りクラウド利用することを推奨しているようです。なので、現時点でのMatter対応は、実質的にはHomeKit対応と考えて良いと思います。

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