AliExpressでZigbee方式の壁スイッチを買いました。Zemismartという会社の物理スイッチ方式の製品です。設置したところ、中性線の配線無しでLEDシーリングライトをon/offでき、またZigbee2MQTTとHomebridge経由でApple HomeKitから使用することができました。 こちらの製品です。
壁スイッチのスマート化
既存の部屋照明をスマート化するにあたっては、壁スイッチを対応製品に交換するのが理想的かと思います。引掛シーリングや電球をスマートホーム対応製品に交換する方式は簡単ですが、残された壁スイッチでoffにされてしまうとシステム側から点灯できなくなります。またリモコンの赤外線信号でコントロールする場合、on/offボタンがトグル式であることが多く、その場合on/offの状態把握ができません。壁スイッチをスマートホーム対応製品に交換すれば、このような問題は全て解決します。
パナソニックの製品
国内で販売されていて、技適にもPSEにも承認された壁スイッチは、パナソニックのリンクモデルとリンクプラスという製品しか見当たりません。リンクモデルは古い製品で920MHzの電波を使っているようです。リンクプラスは新しい製品でBLEを使っているようです。次に説明する中性線問題にも対応しているので、低電力なBLEのリンクプラスを選択すべきです。また、どちらもEchonet liteに対応したブリッジがあるので、Home AssistantやHomebridgeから使用可能と思われます。価格は、1 Gang 壁スイッチが15,000円、ブリッジが32,500円、実売価格はセットで3万円くらいです。
ただ、値段が高いのは致し方ないとしても、実は上記のサイトでアナウンスされているように、現在販売されていません。売れなかったので販売中止したのか、半導体不足で生産できないのか、はたまたMatter対応機を準備していてそれに切り替えるためなのか不明ですが、どこの販売サイトでも入荷未定な状態で購入することができません。
国内製品が壊滅状態なのに対して、AmazonやAliExpressなどでは、多数のスマート壁スイッチが安価に売られてます。それを試してみることにしました。
中性線が無い問題
既存の壁スイッチをスマートホーム対応製品に交換する場合に問題になることは、壁スイッチの場所に中性線が来ていないことです。家の中の単相電力線は、電圧がかかった電圧線と、外の変圧器で接地されている中性線の対で配線されてます。日本の一般的な照明配線では、壁スイッチに電圧線が、照明器具に中性線が配線されています。そして壁スイッチと照明器具が別の配線で接続されてます。
稀に、壁スイッチの場所にも、中性線が配線されていることもあります。スイッチに常時点灯するパイロットランプが付いている場合や、スイッチがコンセントと合体しているような場合です。中性線が配線されていれば、コンピュータ内蔵のスマートスイッチに置き換える場合に、コンピュータ用の電源を確実に得ることができます。
中性線が無くてもなんとかする方法
中性線が来ていなくても、電力を得ることは不可能ではありません。例えば下図のように配線すれば、スイッチがoff/onのいずれの場合でも、多少の電力を得ることができます。照明器具には、スイッチoffの場合に微弱な電流が流れてしまいますし、onの場合には供給電圧が低下してしまいます。また、照明器具が接続されていなかったり、省電力タイプの器具でインピーダンスが高い場合は、電力が得られずコンピュータが動作しない可能性もあります。
照明器具に流れる電流が足りない場合は、コンデンサを並列に入れて電流を増やす手法も使われます。コンデンサに電流が流れますが、電流と電圧との位相が違うので、コンデンサ部分での電力消費はありません。コンデンサを使う手法は、スマートスイッチだけでなく、蛍スイッチ(offの時にランプが灯るスイッチ)を使う時にも昔から使われていたようです。
スマート壁スイッチ製品の電源方式
AliExpressなどで多数販売されているスマート壁スイッチを調べてみました。接続は、WiFiかZigbeeが多いようです。BLEは見当たりませんでした。電源の取り方については、
- 中性線が必須の製品
- 中性線無しでも使えるけどコンデンサが必要な製品
- 中性線も不要で追加のコンデンサも不要な製品
の3種類があるようです。中性線不要かつコンデンサ不要な製品は、省電力である必要があるため、WiFi方式ではなくZigbeeで通信する製品だけでした。
今回試したZemismartの製品もZigbee接続です。販売サイトの説明では、中性線有りでも無しでもどちらでも動いて、中性線なしの場合もコンデンサは不要と紹介されていました。使用例の写真を見ると、Neutralの端子にはOptionalと書かれていて、中性線有無のどちらにも対応しているようです。
物理スイッチがあって、中性線不要・コンデンサ不要な製品は少ないので、1 gangバージョンを購入して試してみることにしました。スイッチの数をgangというらしくて、1 gangなものは下の写真の左端のモデルです。
HomeKitへの接続方法
Zemismart壁スイッチは、本来はTuyaのZigbeeハブを併用することでLANに接続します。そして、Tuyaのクラウド経由でAlexa, Googleから使うのが本来の使用方法です。ハブを使う場合、Tuyaが配布しているHomebridgeプラグインを使って、HomeKitからも使用できるはずでした。
ただ最近、Tuyaクラウドへの接続が有償化されてしまったようです。これを回避するためには、Tuyaクラウドの機能をローカルに実現するLocal Tuyaという仕組みが必要なようです。
Homebridgeからこの壁スイッチを使うもう一つの方法があります。Tuyaのハブやクラウドを使用せず、Zigbeeで直接接続する方法です。今回はこちらを採用します。このためにZigbee2MQTTとMQTTブローカをサーバコンピュータで起動しておき、このサーバと壁スイッチをZigbeeでペアリングします。AliExpressの販売ページにも、Zigbee2MQTTで動いたというコメントがありましたので使えそうです。TuyaのZigbeeチップはほぼ解析されているようで、Zigbee2MQTTで大抵動きます。
マニュアルを見る
製品には、紙一枚のマニュアルが付いています。それを見ると、「スイッチの動作には中性線が必要」って書いてありました。とはいえ、実際の本体裏側にはやはりNeutral (Optional)と書いてあります。マニュアルのバージョンと製品バージョンが違うのかもしれません。また、販売サイトには、中性線で配線した方が安定するという書き込みもありました。使ってみないとわからないところかもしれません。
また、本体裏側にはAC 110V~240Vと書いてありましたが、マニュアルにはAC 100V~250Vと書いてあります。こちらはマニュアルを信じて楽観的に行きたいと思いました。
分解してみる
ネジを外すと簡単に開けられる構造だったので、中を確認しました。高電圧交流回路部分と、低電圧コンピュータ回路部分が別のユニットになっていて、コネクタで接続されています。どちらのユニットも白塗りの綺麗な基板で、間には絶縁用のプラスチック板が挟まっています。合理的で丁寧に作られている様子で安心できました。低電圧部分の基板の写真を以下に示します。
右下にあるパーツは、ESP8266のようです。
ネットで検索したところ、この配線を調べて、ESP8266をESPHomeでプログラムしなおしたという人がいました。
ESPHomeで使う場合は、接続はWiFiになります。ESPHomeならばMQTTも使えるので、汎用性は高いかと思いました。ただ、Zigbeeよりも電力を使うことになるかと思うので、この改造をするなら中性線配線が必要になるかもしれません。
古い壁スイッチを置き換える
今まで使っていたパナソニックの古い壁スイッチを外して、このスイッチに置き換えました。中性線は来ていない場所です。この製品はUS仕様ですが、壁の穴の形状・サイズ、2箇所の取り付けネジの位置は、US仕様と日本仕様で全く同じです。なので、ねじ止めし直すだけで交換できます。
壁に対する加工は不要なので、賃貸物件にお住まいの方も、現状復帰が可能です。ただ、日本の壁スイッチにはVVF線の被覆を12mmくらい剥いて差し込むのが普通ですが、このスイッチのターミナルの奥行きはもっと短くて7mmくらいです。なので古いスイッチを取り替える際には、銅線を5mmくらいカットして、接続しました。現場復帰する場合は、被覆をまた5mmくらい追加で剥がす必要があります。
この壁スイッチの先に接続されている照明器具はYeelingのLEDシーリングライトです。手動でon/offしたところ、問題なく点灯・消灯しました。中に電磁リレーが入っているようで、on/offするとカチッと音がします。他のLEDシーリングライトも試しましたが、同様に動作しました。中性線無し・コンデンサー無しでも、ちゃんと動いているようでした。
Zigbee2MQTTで動かす
次に、いよいよZigbee2MQTTとペアリングします。様子を確認するために、Homebridgeサーバー側で、
mosquitto_sub -h localhost -t zigbee2mqtt/# -v
のようにして、MQTTをメッセージをモニターしました。マニュアルによると、スイッチを15秒間長押しするとペアリングモードに入ると書いてあります。実際には数秒でLEDが点滅を始めてペアリングが開始しました。Zigbee2MQTTでサポートされていたようで、問題なく認識されました。MQTTから以下のようにIDを指定してpubすると、壁スイッチをon/offできます。トピックスの中の0xffffffffffffffffの部分は、サブスククライブの結果に表示されている、製品固有のZigbee IDを入れてください。
$ mosquitto_pub -h localhost -t zigbee2mqtt/0xffffffffffffffff/set -m off $ mosquitto_pub -h localhost -t zigbee2mqtt/0xffffffffffffffff/set -m on
ペアリングが終了すると、Zigbee2MQTTプラグインを入れたHomebridgeにも自動的に登録されます。これにより、iPhoneとMacのホーム.appにスイッチのボタンが自動的に現れ、操作できるようになりました。初期名前はZigbeeのID番号で、アイコン形状はスイッチだったのですが、名前を「あかり」に、アイコンを電球に変更しました。
追記:MQTTのログを見ると、TuYaのこちらの製品の互換製品のようです。
まとめ
AliExpressでZemismartという会社のZigbee接続壁スイッチを購入したところ、Apple HomeKitで問題なく動作しました。LEDシーリングライトと一緒に使った限りでは、中性線無しで動作しました。古い壁スイッチをスマート化するのに適した製品だと思います。白くて角が丸いデザインが、日本の家でよく見かけるPanasonicの現行製品(コスモワイド埋込スイッチ)と似ているので、雰囲気を合わせやすくて良いと思いました。
コメント